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最高裁判所第一小法廷 昭和24年(れ)1549号 判決

主文

原判決を破棄する。

本件を札幌高等裁判所函館支部に差戻す。

理由

札幌高等検察庁函館支部検察官検事佐藤豁の上告趣意について。

昭和二二年八月二五日政令一六五号が公布施行される前においても、同年六月二七日連合国最高司令官の日本政府宛刑事裁判権の修正に関する覚書が発せられた後においては、占領軍若くはそのすべての兵員、又は占領軍に所属若しくは随伴する凡ての者の財産を、正当の権限なしに所持、取得、受領又は処分するときは昭和二一年勅令三一一号二条三項、四条に該当し、占領目的に有害な行為として処罰されるものであることは当裁判所の判例とするところである(昭和二四年(れ)二六三六号同二五年七月一三日第一小法廷判決、判例集四巻七号一三二六頁以下参照)。ところで、原示第一の事実(昭和二二年七月上旬頃札幌市外真駒内米国占領軍兵舎内塵埃箱の中から他の雑役夫が隠して置いた米国兵士用の赤皮短靴一足を窃取した)、同第二の事実(同月中旬頃同兵舎物乾場附近から、米軍兵士用作業服上衣一着及び、パンツ一枚を窃取した)、及び本件公訴第三の事実(被告人が昭和二二年七月下旬米軍兵士から洗濯を為した謝礼として同人所有のズボン一着及びズック靴一足を不法に取得した)の各所為はいずれも昭和二二年七月中の所為、すなわち、同年六月二七日以降同年八月二五日までの間の所為であるから、前記勅令三一一号二条三項、四条によって占領目的に有害な行為として処罰される筋合のものであるといわなければならない(尤もその後昭和二二年政令一六五号でその刑が変更され、昭和二四年政令三八九号により政令一六五号が廃止されたが、その附則二項で従前の例による)。しかるに原判決は公訴第三の事実については事実の確定もせず、右各連合国占領軍の占領目的に有害な行為を為したとの点はいずれも罪とならない旨を判示したに過ぎないのは、法令の解釈をあやまり、その結果理由不備の違法があり、その違法は少くとも公訴第三事実の確定に影響を及ぼすものといわなければならぬ。されば本件上告はその理由があり原判決は破棄を免れない。

よって旧刑訴四四七条、四四八条の二に従い、裁判官全員の一致で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 沢田竹治郎 裁判官 真野 毅 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 岩松三郎)

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